複数の原因と、筋肉ロックという視点

ケアを受けると、張りが和らぎ、身体が軽くなる。動くことで、楽になることもある。

一方で、十分にケアをしているのに、特定の硬さが残る。一時的に動きやすくなっても、同じ動きにくさが戻ってくる。選手やケアを担う人は、そうしたケースに直面することがあります。

ゼロ化整体では、変わった部分と、変わりきらずに残っている部分を分け、何が残る硬さに関わっているかを考えます。

普段のケアで変わることと、残ることを分ける

ケアによって変化が出ていても、本人が求める動きまで十分に変わっているとは限りません。

例えば、身体全体は軽くなったのに、ある方向への切り返しだけが難しい。張りは和らいだのに、特定の筋肉は硬いままで、力を入れたり抜いたりしにくい。

こうした場合には、得られた変化を確認したうえで、残る課題を具体的に捉えます。

ケアの後に確認すること 次に考えること
張りや重さが和らぎ、必要な動きもできる 得られている変化を、その後の練習やケアに生かす。
全体は楽になったが、特定の硬さや動きにくさが残る 残っている部分に、別の要因が関わっていないかを確認する。
その場では変わるが、再び同じ動きが難しくなる 対応しきれていない要因と、その後の負荷による変化を見直す。

変化が不十分なときは、同じ対応をさらに重ねるだけでなく、別の要因を確認する必要があるのではないか。ここが、ゼロ化整体の出発点です。

残る硬さに対して、筋肉ロックという視点を持つ

私たちが特に重視してきたのが、「筋肉ロック」という見立てです。

ゼロ化整体では、収縮しようとしても正常に収縮できなかったことをきっかけに、筋肉が緩みにくい状態が続くと考えています。その現象・状態を「筋肉ロック」と呼び、硬さの背景の一つとして扱います。発生についての詳しい説明はR-1にまとめています。

ほかの要因への対応で楽になっても、筋肉ロックが残っていれば、その部分の動きにくさは残る場合がある、と考えています。

ゼロ化整体の見立てを示す図|普段のケアでの変化から、残る要因を探る

図 R-4-1
ケアによって、張りや重さが和らぐ
↓
それでも、特定の硬さや動きにくさが残っている
↓
その部分は、必要な伸び縮みができているか
力を入れる・抜くときに、どう反応するか
↓
筋肉ロックを含め、残っている要因を見立てる
↓
必要な対応を行い、筋肉と動作の変化を確かめる

「ケアで変わらないから筋肉ロック」と決めるのではありません。硬さの質や分布、実際の動作、対応後の反応を照らし合わせます。

また、「筋肉ロック」はゼロ化整体の説明用語です。既存の知識や手法との共通点・違いは、具体的な内容を比較して考えます。

筋肉が硬くなる背景を、三つの観点から考える

ゼロ化整体では、筋肉の硬さを主に次の観点から捉えています。

観点 ゼロ化整体の見立て 確認する方向
循環・排出に関わる要因 「老廃物の蓄積」と表現している状態が、硬さに関わる可能性 普段の回復ケアなどによって、硬さや動作がどう変わるか
供給・エネルギーに関わる要因 ATP不足などが、筋肉が十分に柔らかくなることを妨げている可能性 供給に関わると考える部位への対応で、対象の筋肉がどう変わるか
筋肉ロック 筋肉が自ら緩まず、硬さが残っている可能性 ロックへの対応で、筋肉と動作がどう変わるか

これは、ゼロ化整体が硬さの背景を考えるための枠組みです。筋肉の硬さの原因を医学的にこの三つへ分類し尽くしたものではありません。触れた感触だけで、ATP量や物質の蓄積、血流の状態を測定・確定しているわけではありません。「老廃物」は、この見立てで用いている表現であり、特定の物質を同定した結果や、乳酸・炎症物質と同じ意味で用いているわけではありません。

また、それぞれが単独で関わる場合だけでなく、複数の要因が重なっている場合も考えます。

筋肉ロックへの対応も、全体の中に位置づける

筋肉ロックに着目することは、これまでのケアを置き換えるという意味ではありません。

循環などへの対応で変わる部分があれば、その変化を生かします。そのうえでロックが残っていると見立てた場合には、ロックへの対応を加えます。

反対に、ロックに対応しても十分に柔らかくならなければ、供給に関わる要因など、ほかの要因を確認します。

次の図は、複数の要因が重なっていると見立てた場合の考え方の全体像です。一つの要因への対応で変化が出た後も、残る硬さや動きにくさを確認し、次の対応を組み立てます。触診と見立てを行き来しながら進める流れはA-2、硬さが戻る場合の見直しはB-1で説明しています。

複数の要因が重なる硬さと、対応の組み合わせ
図R-4-2|ゼロ化整体の見立てを示す抽象的な模式図。色の重なりは複数の要因を考えるための表現で、実際の筋組織や、要因の量・割合を示すものではありません。対応する順序は一律ではなく、硬さの質や反応に応じて選びます。

大切なのは、方法を一律に増やすことではなく、今の状態で何が変化を妨げているかを見極めることです。

現場での経験と、そこから考えていること

一つの対応では変わりにくかった筋肉が、別の部位への対応を加えることで柔らかくなりやすくなる例を経験してきました。ただし、この観察と、そこに血液供給・ATP・排出などがどう関わったかという原因の説明とは、区別して扱っています。具体的な対応の順序はA-2で紹介しています。

長く硬さが続いた場所については、私たちは筋膜同士の滑りにくさも関係すると考えています。力で剥がすことから始めるのではなく、循環に関わると見立てた問題へ対応し、外から強い刺激を加えなくても状態が変わるかを確認する、という考え方です。「循環が戻り、筋膜の間が潤って滑りやすくなる」という説明は私たちの仮説であり、筋膜の癒着・水分量・血流を直接測定して確定したものではありません。

普段のケアで変わることを確かめ、残っている硬さに別の手掛かりを探す。筋肉ロックへの対応と、柔らかくなれる条件を整えることを、合わせて考えています。

関連する説明